無とは何もないこと

総てがないのではなく「無」という状態があることずら

ロックマン11の感想

ロックマン11のレビューでも書いてまとめておこうかと思ったので記載。

結論

とりあえず結論から。

ロックマン11はロックマンとして150点くらいの点数を出せる作品だった。
しかし、現代においてロックマンであることそのものが枷だった。

ロックマン10までを踏まえたロックマン11

過去のロックマンと比べてどうだったかみたいなこともとりあえず書くけれど、実際のところ本題ではないので適当に書き流す。

ロックマン11の良かったところ

バランス調整

地味に特殊武器がどれも使いどころあったり、ボスがゴリ押しもできるし避けながらも戦えるといったバランスが取られてた。特殊武器の活躍についてはロックマンシリーズの究極の課題だと思うが、そこをクリアしている本作がロックマンシリーズとして優れているというのは間違いない。

ロックマン11の良くないところ

コンテニューポイントの配置

ステージが長いという評判が多いがすばやくプレイして5分程度の長さなので、過去作と比べて長くなってはいても極端に長いわけではないと思う。

長さを感じさせるのはORIGINAL SPECでコンテニューポイントがやたらと少ないところだろう。そこそこ進んだと思ったらかなり戻されたとなると長さに戸惑うのも仕方がない。ステージを難しくしてもリトライポイントは減らすべきではなかったのではないかと感じた。

ロックマンシリーズとして

ロックマンとしてどうかというのはまあこんなところであるが、根本的な問題はそんなところではない。

ロックマン11に対する感想が決まってくるのはもっと大きな視点で考えたときだ。

ロックマンロックマンX

リアルタイムで追いかけていたわけではないので当時の風潮は想像でしか語れないが、ロックマンシリーズがSFCに進むという転機にあたって生まれたのがロックマンXというシリーズなのではないかと思う。

ロックマンXロックマンから進化した点としては下記の3つが大きいのではないかと思う。

ハードなストーリー展開
今となっては茶番のような展開にしょうもないエックスVSゼロといったカスみたいなストーリーの作品に成り果ててしまったが、主人公エックスの相棒ゼロという存在やイレギュラーハンターという組織の存在などロックマンにはなかったハードなストーリーがXシリーズの魅力の一つだったのは間違いないだろう。
壁蹴り
2Dアクションの革命である壁蹴りは欠かせないだろう。壁蹴りがあることで高さ方向のギミックが大幅に増えているということも重要なポイントだが、「落下死の減少」というのがプレイしていて大きい。「穴に落ちないように集中してジャンプして失敗したら即死」というのはあまり楽しくないのだ。
ダッシュ
スライディングに代わってダッシュが導入されたのも大きい。ダッシュがスライディングとの大きく違うのは「攻撃と両立できること」だ。これによってゲームのスピード感が大きく引き上げられた。特にSFCのXシリーズではダッシュバスターが強化されていることからも、ゲームスピードを引き上げようというデザインが感じ取れる。

さて、ロックマンの進化系としてのロックマンXが誕生した以上、ロックマンがその方向に進むことはできなくなった。

ストーリー展開もライトとワイリーの結末がエックスとゼロに向かう以上のことはできなくなってしまったし、壁蹴りを導入して落下死を防ぐギミックを導入することもできなくなってしまったし、スライディング中にバスターを撃てるようにしてゲームスピードを引き上げることもできなくなった。仮にこれらをやったとしてもロックマンらしさは失われてしまうのでロックマンXを求められるだけだろう。

そうなってしまった以上、ロックマンX5まで発売されるまでロックマン7,8,&フォルテの三作(+未来からの挑戦者)出たのみでその後の数年はXシリーズのみの展開となったのも自然なことだろう。

そして、しばらくの休眠期間(ロックマンロックマンが出たり、ロックマンエグゼトランスミッションロックマン風のゲームであったりはしたが)を経て発売されたロックマン9,10が2の時代の懐古趣味のような作品になったのもロックマンXが広げたうえで「ロックマンらしさ」を追求した結果、「『ロックマンらしさ』とは古臭さである」という考えがあったのかもしれない。

現代のゲームとしてのロックマン11

そのようなロックマンの歴史を考えるとロックマン11はロックマンとして正統だがそもそも現代において正統のロックマンは光り輝ける存在なのかという問題に当たってしまったように思う。

ブルース・フォルテをストーリーから除外してライト・ワイリーを中心とした展開にしたことはロックマンというコンテンツとして出すべきものを出せているし、キャラクターコンテンツとしてのロックマンの強みは健在だ。

しかし、ロックマンというゲームとして"強み"はあっただろうか。

ステージが長いと言われることについても、実際にはゲームスピードの遅さの方が影響が大きいような気もする。ここで言うゲームスピードはスピードギアでスローになるのが悪いという意味ではない。出てきた敵への対処として「距離を詰めながらだんだんとHPを削って仕留める」「遠距離で仕留める」「一気に近付いて仕留める」などの手段をとるわけだが、その一連の操作の密度が詰まっているのがゲームスピードの速さなのだと感じる。

ロックマンゼロで「敵の攻撃を避けながら近付いてセイバーで仕留める」のとロックマンで「敵の攻撃を避けながら近付いてバスターで仕留める」のはほぼ同じような文章だがプレイ感は全く違うだろう。ロックマンゼロは画面が狭いので一連の操作にかかる時間は非常に短い。それが半ば覚えゲーのような難しさでもあるのだが、爽快感の源でもある。ロックマンだと画面が広いこともあって近接するまでに時間がかかる。この時間の違いがプレイ感に大きな違いをもたらしているのではないか。

この違いが決定的なものなのだと感じた。

つまり、冒頭で書いた「現代においてロックマンであることそのものが枷だった」というのは、ロックマンというシステムである以上、ギミックの密度が埋まらないので爽快感が得難いという意味である。

ロックマンXが獲得したスピード感をロックマン11は表現していない。ロックマンXではない以上、表現してはいけない。ロックマンXが進化したロックマンならロックマン11は進化してはいけなかったロックマンという生まれながらの宿命である。

根本的には、自分はロックマンX以降のシリーズは好きだけどロックマンシリーズは好きじゃなかったということなのかもしれない。