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特撮感想:ゴジラの逆襲

ゴジラの逆襲

原作:香山滋 脚本:村田武雄、日高繁明 監督:小田基義 特技監督円谷英二
公開:1955/4/24

登場怪獣

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ゴジラ
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アンギラス

感想

ゴジラ』のヒットを受けて急遽作られたという続編。11/3に『ゴジラ』が公開されて、半年も経たずに続編が公開されるという現在では考えられないような短いスパンでの続編となった。Wikipediaによると撮影は3ヶ月に満たなかったという。


本作の劇伴は伊福部昭ではなく佐藤勝が担当している。前作とうってかわって明るい曲調のメインテーマ曲が印象に残る。


冒頭で北緯34度、東経136度にて鰹の大群を発見したという報告しているが、該当する場所は紀伊半島の山の中である。単純なミスであろうか、それともゴジラの世界は我々の地球とはまた異なっているということを表しているのか。


小林が不時着した無人島でゴジラアンギラスが戦いを繰り広げている。前作ではゴジラの登場が遅かったのに対して、今作では冒頭から怪獣の戦いが描かれると作風の違いが目に見える。

アンギラスの正体を調べるための会合に前作から山根博士が引き続き登場している。
アンキロサウルスが肉食恐竜と説明されているが、実際には草食である。アンギラスと実際のアンキロサウルスの外見は似ている(といってもアンキロサウルスは想像図だが)とはいえ、別物であると考えるべきであろう。アンギラスは脳が体の各部に存在しているため素早く動けると説明されているが、脳が各部に存在するという異常な設定が活かされなかったのが残念。
アンギラスゴジラと同じく水爆実験によって蘇ったとされているが、水爆の話題はここで打ち止めとなり物語の軸とはなっていない。また、山根博士もこの会議の場面のみの登場である。

フリゲート艦が北緯34.30分、東経134.50分にてゴジラを捉えているが、該当箇所は瀬戸内海である。こんなところにゴジラがいたら淡路島で発見されても不思議ではないはずだが……。この後に地図を広げるシーンでは淡路島の南を指している。


ゴジラは一旦四国に上陸すると予測されていたのが、大阪に上陸しようとするという台風のような扱い。大阪上陸を防ぐため、山根博士の発案どおり灯火管制を行い、照明弾によってゴジラ海上へ引き離すという作戦が実行されることになった。作戦はほぼ成功していたが、護送車両から逃亡した囚人が工場にタンクローリーで突っ込み爆発炎上。そこに向けてゴジラが進行してきてしまう。
ここの展開は、さすがに強引すぎると感じた。「見張りの警官が簡単に押さえつけられて銃を奪われ、運転する警官は囚人の嘘に簡単に騙され(どう考えても押さえつけられた警官の声が聞こえるはず)、たまたまタンクローリーが放置されていたところで逃亡する」という流れはあまりにもご都合主義的でタンクローリーを奪った時点で爆発してゴジラが来てしまうんだなと読めてしまった。

ゴジラの上陸を追うかのようにアンギラスも上陸。ここの戦いは噛み付きを主体とした戦いで獣の戦いという感じで良い。プロレス世代ではないのでウルトラシリーズの怪獣プロレスよりも自然に見ることができた。ところで放射能熱線を吐くときに背びれが光っていないが製作期間の短さが影響しているのだろうか。

炎上する工場を見る社長のシーンの後の戦いはコマ落ちして異常に素早く、ギャグのようになっている。撮影スタッフの高野宏一がミスをしてこのようになったものを円谷英二が面白いからとOKを出したらしいが、重量感が欠片も感じられず映像から浮いてしまっているように見えて自分は好きではない。建物が壊れるシーンではスローになっているため余計にそう感じてしまう。

大阪城に押さえつけながらアンギラスの首筋を押さえつけ(この時点で決着はついてるように見える)、重量で大阪城が壊れるシーンは圧巻。やはりこの映画一番の見せ場はここだろう。
物語半ばにして倒されたアンギラス。このときはまだゴジラと怪獣の戦いがメインではなかったということだろう。

大阪の街が破壊されたということで物語の舞台が北海道に移る。
タラの大群が見つかった場所は北緯32度、東経146度とこの作品の中では常識的な地点となっている。


北海道編はゴジラが出ることもなく話が進むため、正直退屈だった。
ソーラン節を歌う宴会は古き日本の姿を表していて昭和を感じられて良かったが、ここまでで小林に感情移入するほどの描写があまりなされていないので縁談のくだりなどがどうでもよく感じられた。

またも出現するゴジラ。今度は東経148度、北緯53度にある神子島らしい。オホーツク海に入り込んだ地点だが、戦後の日本からこんなところに行ったらソ連から攻撃を受けるのではないだろうか。


この神子島でのゴジラとの戦闘(というのも怪しいが)はどうにも消化試合という印象が拭えない。そもそも民間人である月岡・田島が自衛隊の機体で出撃してもよいのだろうか?
ひたすら雪山が爆破する映像が流れるだけで代わり映えがせず見ていて退屈した。また、ゴジラの攻撃を受けたわけでもなく雪山に突っ込んでいった機体もあり、困難な任務であると表現しているのだろうがどうにもマヌケな映像にしか見えなかった。

雪崩で生き埋めにされるゴジラ。「小林、とうとうゴジラをやっつけだぞ」と月岡が言っているが、熱線で溶かせそうなもので、とても倒せたようには思えなかったので、見ていてこれで終わりかとツッコんでしまった。

前作のヒットをうけて急遽作られた作品ということもあり、実際粗も多いとは思うが、怪獣の戦いという後に続く試みがなされたのはとても大きいことであると思う。